日本産のウイスキーがイギリスで人気!
バーボンの「ジムビーム」やスコッチウイスキーの「ラフロイグ」などのブランドを擁するビームサントリーは、欧州の酒愛好家が新たな味わいを受け入れる準備ができていると考えている。それは、桜の花など日本ならではの異国情緒豊かな素材を使って造られたジャパニーズジンだ。
日本の植物6種を使って造られたジン「ROKU」が英国市場に本格投入され、スーパーマーケットチェーン「ウェイトローズ」で1本30ポンド(約4400円)で販売されている。ロンドンやマンチェスター、リバプール、グラスゴー、エディンバラのバー50カ所余りでも提供され、ジン人気が高まっている英国全土に拡大される計画だ。
ROKU:危険なほど柔らかく、口当たりがまろやか
2月27日のランチタイム前、サントリースピリッツ商品開発研究部専任シニアスペシャリストの鳥井和之氏が、アルコール飲料の専門家らにジントニックをふるまった(私はロンドンのレストラン、フォー・ディグリーでテイスティングに参加した)。
「普通とは違う何かを造りたかった」。われわれが5種類の異なるタイプのジンを味わっている間、鳥井氏はそう説明。その後、ROKUの特製ジントニックが、氷とショウガのスライス6片と共に供された。
数字の6を意味するROKUは大阪工場で蒸留される。桜花、桜葉、ユズ、煎茶、玉露、サンショウという6つの素材が使われる。それぞれの素材は、味わいが深まる旬にこだわって収穫されている。
六角形のボトルの6つの断面には、6種の素材のうちの1つがそれぞれ刻まれ、ラベルは和紙に印刷されている。
では、フレーバーはどうだろうか。ROKUは危険なほどに柔らかく、口当たりがまろやか。かすかにスパイシーでかんきつ類の香りがする。ジュニパーベリーやコリアンダーシード、アンジェリカルート、アンジェリカシード、カルダモンシード、シナモン、ビターオレンジピール、レモンピールの8種の植物も含まれている。
スコッチウイスキーの本場である英国では、サントリーの「響」「白州」「山崎」といったブランドの人気が高まっており、同社はジンでも成功を収めることを望んでいる。
サントリーは、鳥井信治郎氏が1899年に創業しブドウ酒の製造・販売を開始。1923年にウイスキー事業を、36年にジンの発売をスタートした。
鳥井和之氏
英国ではジンの人気が高まっている。英国ワイン・スピリッツ協会によれば、昨年9月までの1年間の同国での消費者のジン購入量は4700万本と、前年同期の4000万本から増加した。
調査会社ユーガブの昨年の調査によれば、ジンは英国でスピリッツのうち最も人気が高く、愛飲家の29%がジンが好きだと回答している。前年に3位だったジンはウイスキー(25%)とウオッカ(23%)を上回った。
鳥井和之氏によれば、ROKUは、4つの異なるタイプの蒸留器を使い、植物を別々に蒸留。最高のフレーバーを抽出し、それぞれの植物独自の味わいを保っている。例えば、桜の花の繊細な香りはステンレス釜で減圧蒸留、ユズの深みのある香りは銅釜で常圧蒸留する。
「世界的なスピリッツブランドの成功という意味では日本産はウイスキーによって先陣を切っている。ジンがそれに続かない理由はない」。ロンドンのレストラン、トンコツ・メア・ストリートでジャパニーズウイスキーを提供するエマ・レイノルズ氏はそう語る。