機能性表示食品 サントリー

サントリー食品インターナショナルは4月3日、機能性表示食品のウーロン茶「おいしい腸活 流々茶(るるちゃ)」を全国で発売する。希望小売価格は税別150円。同製品に配合されているイヌリン(食物繊維の一種)には腸の動きを活発にする働きがあり、「お通じの習慣を改善する」機能をうたう。

 飲料業界では「センミツ」(新製品が1000あればヒットするのは3つ)という言葉があるように、毎年多くの新製品が発売される。

サントリー、方針転換のなぜ?

 サントリーも毎年多くの新商品を投入しているが、流々茶が特徴的なのは、これまで特定保健用食品(トクホ)しか手掛けてこなかったサントリーが発売する、同社初の機能性表示食品だからだ。

 そもそも、機能性表示食品は2015年4月に開始された制度だ。これによってメーカーは、消費者庁に科学的根拠となる論文などを届け出るだけで製品に健康効果を表示できるようになった。国による有効性の審査を経て認可を得るトクホに比べて、より少ない費用で製品を開発、短い期間で発売できるようになる。

 トクホにこだわってきたサントリーが、機能性表示食品まで手掛けるようになった背景には、これまで同社が積極的に開拓してきたトクホ飲料市場の急激な環境変化がある。

 サントリーにとって、トクホ飲料関連商品の販売数量の6割を占めるのは「伊右衛門 特茶」だ。同製品は2013年10月に発売。以来、毎年2ケタ成長を続け、トクホ茶市場の伸びを牽引してきた。

 英調査会社ユーロモニターによれば、2016年の販売金額は616億円。競合である日本コカ・コーラの「からだすこやか茶W」(同179億円)、花王の「ヘルシア」(同85億円)と比べると、圧倒的な存在感だ。

 だがここに来て状況が一変。成長に急ブレーキがかかっている。発売から4年目の2016年には1680万ケース販売を達成し、前年比17%の伸びを2年連続で記録したものの、2017年には一転して数量を落とした。コーヒーの「BOSS」や「天然水」といった主要ブランドが前年比6~7%増と好調に推移したのとは対照的だ。

 主要ブランドの多くで前年並みの販売計画を立てている2018年も、特茶の販売数量は前年比10%減の1480万ケースと2年連続の減少を見込んでいる。その他のトクホ飲料でも穴埋めできず、「黒烏龍茶」や「胡麻麦茶」などを含めたトクホ全体でも同じく10%程度の販売減見込みだ。

 トクホ市場に何が起きているのか。飲料市場に詳しい飲料総研の宮下和浩取締役は「機能性表示食品のほうが新製品の発売が多く、トクホとの区別があいまいな消費者が流れている」と指摘する。

 富士経済によれば、2017年(予測)のトクホのドリンク類市場規模は2618億円と2015年比で5%の伸びにとどまるのに対し、機能性表示食品市場は開始から3年弱で同3.7倍の392億円に拡大した。

審査に時間がかかるから機能性表示食品に

 市場自体はトクホに比べると小さいが、機能性表示食品の届出受理件数は1200件を超え、トクホ承認品目数の1082件を上回っている(3月15日時点)。メーカーにとっても、開発のしやすさに加えて、消費者に訴求できる効果が豊富だという点が機能性表示食品の市場拡大を手伝っている。

 トクホは「体脂肪分解」や「血圧上昇抑制」など記載可能項目が限られているのに対し、機能性表示食品では「ストレス・疲労感の低減」や「目や鼻の調子を整える」、「記憶力の維持」など表記がバラエティに富んでいる。

 今回、機能性表示食品に参戦するサントリーも、「特茶が訴求する体脂肪対策系は健康飲料の中でも特に競争が激しく、『お通じの習慣改善』という効果で他製品との差別化を図った。トクホとしての発売もできたが、国の審査には1〜2年かかる。その間に他社に先行されたくなかった」と説明する。

 これまでトクホ一辺倒だったサントリーの方針転換は、急激な市場変化の象徴といえる。成長する機能性表示食品市場をうまくとらえられるか。

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