百貨店の未来は?百貨店からPB撤退!

百貨店の将来あるべき姿は、やはり見いだせないままである。

 セブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下の百貨店であるそごう・西武は、衣料品を中心としたプライベートブランド(PB)「リミテッド エディション」の販売を2月末で取りやめることを決めた。

 同ブランドは2009年にスタート。高田賢三氏ら著名なデザイナーを招いて商品企画をし、縫製や素材にこだわりながら、価格はナショナルブランド(NB)の商品より抑えたのが特徴だった。年間売上高はピーク時100億円ほどだったが、現在は60億円程度まで落ちている。

 百貨店のPBはNBより粗利を大きくできるため各社が開発に取り組んできた。とりわけ三越伊勢丹HDでは、大西洋前社長の下で進められたが、現体制下では異例の超低価格で在庫処分するなど、大幅な見直しが行われている。

 そごう・西武は、三越伊勢丹HDのそれよりもさらに手頃な価格帯で、デザイン性の高い商品を投入し、それなりの認知度を維持してきた。「リミテッド エディションさえ成功していれば、そごう・西武は復活していたはずだ」(百貨店業界関係者)との声さえある。

セブンの意向も影響?

 同社によると、PBはNBと異なり自社の社員が販売を担うが、販売が伸び悩んだことで、その人件費が粗利を圧迫していた。また、アパレル業界から衣類のデザインやパターンを担う人材を引き抜いてPBの開発チームに加えていたが、ノウハウの蓄積や伝達に限界があったという。

 さらに同社に詳しい関係者は「親会社のセブン&アイ・HDの意向も影響したのではないか」と話す。セブン&アイ・HDは機会ロスを防ぐため欠品を極力出さない物量作戦を是とする。コンビニエンスストアではそれが奏功したが、イトーヨーカ堂の衣料品部門などグループ全体で成功しているとは言い難い。「リミテッド エディションでも欠品を恐れるあまり、在庫を抱え過ぎたのではないか」(前出の関係者)との指摘がある。

 ともあれ、三越伊勢丹HDと並ぶ業界の先進事例として期待されていただけに、撤退の意味は重い。

 現在、都心の百貨店は、インバウンド客と国内富裕層の高額品需要で空前の好業績に沸いている。郊外店が多いそごう・西武はなお苦戦しているが、売り上げの多くを占める婦人服の販売不振という課題は共通している。その解決策としてPB強化が進められてきたわけだが、結果を出すことができず撤退することとなった。

 一方で各社が現在力を入れているのが、不動産開発やフロア貸しによる賃料収入の拡大だ。百貨店各社はこのまま独自性を失い、ショッピングセンター化の道をひた走るしかないのだろうか。